2025年4月18日金曜日

卒研その2(保型形式と代数的整数論)は今日から

昨日帰り際に一問代数の問題を思い付いてしまい、レポートの問題にしよう、ということにした。講義の一週目が終わっただけなのにね。毎年のようにやっているだけのことはある。でブログを書いて後そのことを考え始めて、TeX 化したり、問題の取捨選択をしたり、調べ物をしたり。その過程で新妻弘「演習 群・環・体入門」を開いてみたが、まあ凄い本だ。こんなに細かい所までチマチマとよく書けるもんだと感心した。小生の講義もそんな感じで、同僚が昔講義ノートを見たいと言ってきたので見せたが、その後その人のブログを見たら、「微に入り細を穿つというか、K川先生の性格が良く出ている」みたいなことが書いてあった。学生からはギャップがあまりないので有難がられる。そんな小生が見ても、新妻先生の本は凄い。いい加減寝ないと、ということで程々にしておいたが、もう結構遅かった。

で起きたら12時半を過ぎていた。ギャ!昨年度までなら講義は1時からなので、結構大幅な遅刻に成るが、今年度から95分授業に成ったお陰で3コマ目は1時10分から。5分くらいの遅刻で済みそうだ、ということで結構急いだ。運よく駐車場に入ってすぐの所に停められて、5分遅刻で済んだ。まあ計算通りだ。ということで、今日は「代数学II」。まずアーベル群の自己準同型写像の全体が環を成すことから。昔は証明せいと言って演習問題にしてきたんだが、学生の答案は結合法則とか分配法則とか示してるだけで、f+g が準同型写像であることを示してなかったりと穴だらけだった。なので、最低限演算を定義して、それがちゃんと演算に成ってるとか、恒等写像が乗法単位元に成ってる、即ち End に入ってること(即ち準同型写像に成ってること)を示して、任意の写像に左から掛けても右から掛けても変えないことを示したりと。こういうのをやらないと、何を示していいか分からないという学生が殆どだろう。一昨日書いた逆行列とか固有ベクトルのことも、まず手本を示さないと。そういうことを繰り返して段々自分で一からやれるように成る筈で、最初から突き放すのは令和風ではない。いや、小生平成の頃からやっていたが。その後整域だ体だとやりたいから、まず単元を定義して、R× が群に成ることを示したら時間に成った。これも前に定期試験で問題に出したが、「出来ましたよ」と自信満々に言っていた学生の答案はダメダメだった。単元を二つ取って掛けるとまた単元に成るとか、1 が R× に入ってるとか、肝心なことが何も示せてない。C 評価にしておいたが、奴は不満だったに違いない。馬鹿にしないで講義ノートをちゃんと読んで手本にしてくれればなと思ったのを思い出す。

生協で弁当を買って個研室へ入ろうと思ったら、隣の部屋の H 先生が何やら女性と話しながらこっちに来た。誰だと思ったら卒業生だった。当時は山科に住んでたので、山科組で数回呑んだこともあったが、ちょっと感じが違ったので、名前を聞いてしまった。申し訳ない。何やら学生の前で話をすると言ってたが、今日は生憎4時40分から8時までゼミだ。重ねて申し訳ない。

弁当を食べてから、講義の後始末。資料にちょっと気に食わない所があったので、次年度のために直して、それから演習問題を web ページに上げる作業。正確に言うともう問題は上がっているので、.html ファイルの --> を一行上げて、リンク先を見えるようにするだけなのだが。で演習問題(1)は完成。(2)はどんな感じだろう?と思って見たが、学科のサーバー(学内からしか見えない頁)と、大学のサーバー(学外から見えるが、リンクは公表してない頁)の両方を見たが、両方のバージョンが違ってる。学科のサーバーの方が古い。で手元にある .tex ファイルから .pdf ファイルを作って、上げよう、と思ったが、ここで問題。大学のサーバーに一度繋いで、それを切断して、学科のサーバーに繋ぐ、とやりたいが、どうやるんだろう?前に FFFTP というソフト(ポートの関係で使えなくなった)でやっていた時は、「切断」、「接続」というメニューがあったのだが、今度のソフトはそれが見付からない。一々終了して、もう一回立ち上げ直して、とやった。まあ出来たのでいいです。簡単にやる方法はまた後日探してみる。でその後線形代数の講義の準備をちょっとやって、とかやってたらもうゼミの時間近く。1階に降りて飲み物を買って、というところで F 本先生に会った。まだ今の時間割には慣れませんな、など世間話をして、テキストを持ってゼミ室へ向かう。

金曜日は卒研(その2)。大学院進学希望者二名相手にコブリッツの本で保型形式の勉強と、藤崎先生の本で代数体の勉強。今日は前者だけだったが。手に何も持たず、本も見ずに話していた。それでいてちゃんとしていて、凄いもんだ。こっちに来た次の年だったと思うが、土井先生のご高弟4人が博士課程に進学希望ということで面接をしたが、3人はメモを見い見い必死に話していたが、一人は手ぶらで話していた。凄いのがいるもんだと思って感嘆したが、4人のうち1人は中退、他の3人は決していい職には就いておらず、能力と運とはあまり関連が無いことが分かってしまう。まあ土井先生は昔の方なので、論文は質だ、という方だったので、連中はあまり論文を書かなかったので仕方ない。他にも3名おられたが、彼等もいい職とは言えないことしてる。お一方はあっちこっちで非常勤をしておられる。小生のように下らん事でも論文にするのは今は大事なのだということは、学生には言っておかないと。えーと、話が逸れた。今日は保型形式はまだ出てこず、合同数がどうしたとかそれから y2=x3-n2x の有理点が出てくるとか。こういうのを見ないで話せちゃうところが凄いな。立派に育ってくれればいいが。他大学の院に進学希望、ということだが、学力は心配無さそうなので、後は基礎勉強をしっかり叩き込めるかだな。頑張ろう。で8時まで時間はとってあるが、7時くらいに終わりに成った。

話を聞きながらちょっとメモを取っておいた。合同数の話の基礎的なことは昔勉強したので、それを思い出しながら。で一箇所穴があることが分かった。n が合同数であることを言うには x、x+n、x-n が平方数と成る有理数 x を見付ければよい、という話だったが、まあ x は三角形の一辺から作るので、正なのは当然。n は自然数なので、x+n が0でないのは当然。x-n は?と思ったが、ちゃんと説明してなかったような気がするが、と思って少し考えて、何とか x-n が0でないことを示せた。2がある有理数の自乗に成る(今時「自乗」を使う人はいないか)ということが帰着され矛盾、という証明。まあ大丈夫だった。一つ聞かれたことがあったので、後でその件と合わせてメールを書いておこう。で何だかんだと9時過ぎまで職場にいた。ゼミ後2時間くらい考えられる時間があったが、8時までやられるとそうもいかないな。来週以降はどうなるでしょう?と書いてて思い出した。来週の金曜日は一人用事があって来られないと言ってた。早目に終わるかな。

すき家でカレーを食べて帰宅。まだ道路工事は始まってなかった。もう準備に差し掛かろうという所だったので、後数分遅かったら片側交互通行に成っていたな。危ない。でテレビを付けて「報道ステーション」を見ていたら、アメリカの大学への補助金をトランプが打ち切るというニュース。うーん。足立先生が twitter に書いておられたが、アメリカは自由の国で、誰もが憧れる国じゃなかったのか、と。早稲田の校歌に「進取の精神 学の独立」というフレーズがあったが、学問は為政者の意向と関係無く自由に出来るのはいい筈なのだが。いや、江戸時代とかなら兎も角、2025年(アメリカのことだから令和とは書かないが)の今でこれとは、酷いもんだ。日本でも2000年以降に酷いことはあったがね。東京都知事と横浜市長が馬鹿をやって、大学から数学専攻が無くなった。まあ片方は復活して、大学名も元に戻って(と書けばどこだか自明)、もう片方はデータサイエンスだかの学部が出来て(と書くとこれも自明)。日本のはどっちも公立大学の話だが、アメリカは私立大学がやられている。アメリカの研究は廃れるな。「Make America great again」は水泡に帰すのは目に見えている。いい加減アメリカの人も気付きましょう。