2020年6月15日月曜日

類数1の虚二次体の決定の証明を勉強させてもらう

月曜日は1時からM1ゼミ。今日も Weber 関数や j 関数の特殊値の計算から。ただただ呆然と眺める。Weber は凄い。その後類数1の虚二次体の決定の証明。Heegner のアイデアによるもの。Weber 関数の特殊値を使って、ring class field が3次の拡大体になっていることを示して、最小多項式が特別な形をしていることを証明して、それを不定方程式 2X(X3+1)=Yの整数解の決定にすりかえる。うーん、鮮やか。でその不定方程式を解くのを半ページくらいで済ますのか、と思ったら、いつもの通り演習問題の山が待っていた。いくつかの楕円曲線の整数解決定問題に帰着させるのだが、そのうち y2=x3+1 の整数解の決定がとんでもなく難しい。Euler による無限降下法を用いた証明。うーん、大変。これ x3=y2-1=(y-1)(y+1) と書き換えれば簡単じゃないのか、という気がするが、こうやると Thue 方程式 X3+2Y3=1 が出てくるのでうまくいかない。一番簡単なのは、楕円曲線だと思って rank=0  を示してから torsion を決定すること。これだと代数の演習問題みたいな感じになって、合同式より難しいものはいらない。まあその前に Mordell-Weil の定理と Lutz-Nagell の定理の証明を勉強しないといけないが。何にしても大変。テキストに書いてある「Heegner's argument is clever but elementary-the hard part is proving that f(√(-p))2 lies in the appropriate ring class field. Thus Weber could have solved the class number 1 problem in 1908!」というのが印象的だった。Heegner が証明したのは1952年。Baker が1966年、Stark が1967年。Weber は大魚を逃したね。大幅に延長して、4時40分くらいに終了。

M1の学生に Mordell 方程式の整数点に関することをいくつかコメントして思い出した。先日 Conrad がどこかで話した Mordell 方程式に関する講演をした時のスライドを見付けて、面白そうだと思ってダウンロードしていたのだ。でそれを見てみた。すると、最初に合同式だけで非可解になる例がいくつか紹介されていたのだが、その中に y2=x3-5 が出ていた。これは大概の本には Z[√(-5)] で分解して、Q(√(-5)) の類数が2であることを使った証明が出ている。大学院向けの講義でもこの話をするつもりにしている。が、第1補充法則くらいで証明できるとは知らなかった。こういうのを知ることが出来るのは数学を専門とする学科に就職したお陰。自分の研究は捗っているとは言えないが、数学に触れ続けて興奮できるのはいいこと。ゼミで忙しいというのもいいことだ。

で頃合になったので夕食に出掛ける。今日は久々に「天下一品」。案の定ガラガラで、小生が行った時にいた客は一人。小生が食べ終わったら客がいなくなった。うーん。やっぱりテイクアウトメニュー置きたくなるね。

帰ってきて上に書いた Conrad の書いたのを見ながら、秘蔵の「初等整数論問題集」に何題か加える。こうやっておくと何かの時に使えるので、マメに TeX 化することにしている。でそんなこんなしているうちに学生から質問。いつもの2回生 C 君から。初等的な質問だったが、初心者はこういう所で引っかかるのか、という感じ。やはり2回生には写像とか体とかベクトル空間とか難しいんだな。言葉を尽くして説明したら、またすぐメールが来た。言葉を尽くしたことでかえって混乱したようだ。もう一度別の仕方で説明する。今度は分かったらしく返信がない。彼の特徴は理解するとメールが来なくなること。小生なら御礼のメールくらいは書くがな。まあいいんだけど。質問されるのがよくわかっている内容だと楽だ。工系の大学に就職すると、微分方程式とかフーリエ解析とか質問されそうで恐い。やはり数学系の学科に就職できてよかった。

明日は9時前には起きるつもりなので、早いとこ寝る。11時から会議なのだが、小生がいないと始まらない会議なので、絶対に遅刻は出来ない。アラームを8時半と9時に仕掛けておこう。